課題図書レビュー

9月28日に確認テストを実施した課題図書の生徒レビューをご紹介します。




中島敦『李陵・山月記(改版)』(新潮文庫)

李徴は、詩家としての名を遺そうとして退官するが挫折し、再び役人となるが出世の遅れに発狂して虎になってしまう。彼を追い詰めたのは、己の才能の限界を知ることを恐れる臆病さであった。切磋琢磨から逃げて人との交流を絶った結果、俗物から自分を守るつもりがかえって自分を破壊してしまう姿は実に皮肉であると感じる。失敗を恐れるあまり素直になれず、孤立していく李徴の弱さは、プライドや不安などに左右される人間の心理を鋭く突きつけてくると思う。






平田オリザ『幕が上がる』(講談社文庫)

「幕が上がる」。読み終わった後まさにその題名がふさわしいと感じさせられる内容だった。主人公の様々な感情が、高校生として過ごす今の自分に重なったと強く感じた。主人公が所属する演劇部はあまり強くない。しかし、出会いや波乱が続く中、部員それぞれが演劇に注ぐ思いが強くなることで、主人公のやりたいことが見つかり、たくさん考え、読んでいる人も深く意識させられる。主人公が転校生と話したり、他のメンバーとも打ち解けて、演劇をより良くするシーンは、この本の大きな魅力の1つだ。人間関係に悩んだり等身大の自分といわれてもわからないと感じる人に読んでほしい、高校生のありのままを描いて伝えてくれている作品だ。




カフカ/著 丘沢静也/訳『変身/掟の前で 他2編』(光文社古典新訳文庫)

フランツ・カフカの『変身』を読んで、最も印象に残ったのは、主人公のグレーゴルが突然虫になった事を、非常にリアルに描いているところです。虫になった後も、グレーゴルは家族のことや仕事のことを考え、自分が家族の役に立てなくなったことに苦悩し、その心理描写が細かく、人間が虫になった苦しみが鮮明に伝わってきました。また、グレーゴルが虫になったことで、家族との関係が少しずつ変化していくところも印象的です。特に、それまで家族を支えていたグレーゴルが、次第に家族から必要とされなくなり、最終的には全員から邪険に扱われてしまう過程には、人間関係が簡単に崩壊してしまう事を感じました。

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